遠方にいるご家族が、施設から「お亡くなりになりました」と電話を受ける場面では、誰が診断書を受け取り、どこの市区町村に死亡届を出すかが最初の焦点になります。戸籍の期限は全国共通ですが、施設形態によって診断書に書かれる「死亡したところの種別」が異なります。本記事は、厚生労働省の死亡診断書記入マニュアルと法務省の死亡届案内を突き合わせ、介護施設で亡くなった直後に必要な判断材料をまとめます。
全体の地図は直後の総合ガイド、書類の受け取り窓口は死亡診断書のもらい方、届出の持ち物・提出先は死亡届の提出期限と書類に分けています。
施設から救急搬送され、病院で死亡が確認された場合は以降が病院ルートです。病院での記事を優先してください。
この記事でわかること
- 特養・老健・有料老人ホームなどで、診断書の「死亡したところ」がどう記載されるか(厚労省マニュアルの区分)
- 施設で亡くなった場合の死亡地と、死亡届を出せる市区町村の候補
- 施設の連絡後から死亡届までの標準的な順序と、7日期限との関係
- 死亡届受理後に自治体で話題になる埋火葬許可の入口(市区町村例)
- 施設に電話・対面で確認すべき質問リスト
- 並行手続き(死亡届・火葬24時間・年金・葬祭費)の期限一覧
- 戸籍法上の家屋管理人(施設長が届出人になる場合の論点)
- 入居前チェックリストと市区町村公表へのリンク例
入居契約ごとの安置日数・搬送料・精算ルールは公表がない事業者も多く、本記事では契約書と施設窓口の案内を基準と明記します。
施設の種類と診断書の記載
死亡届に添付する死亡診断書(死体検案書)では、「死亡したところ及びその種別」が記入されます。厚生労働省の記入マニュアルでは、入居施設で亡くなった場合、住民登録をその施設にしていても「自宅(6)」ではなく、施設の種類に応じた区分を選ぶよう示されています。遺族が戸籍窓口で「死亡地はどこか」と聞かれたとき、この欄が根拠になります。
| よくある入居先 | マニュアル上の種別(目安) | 記載のポイント |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、軽費・養護老人ホーム | 5 老人ホーム | 施設名称を記載。「老人ホーム」には特養・有料等を含む(厚労省マニュアル) |
| 介護老人保健施設(老健)、介護医療院 | 3 介護医療院・介護老人保健施設 | 施設名のあと括弧で「介護老人保健施設」等と書く旨がマニュアルにあり |
| グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅(賃貸)など | 6 自宅(グループホーム等) | 有料老人ホームは「5」に含み、「6」には含まれないとマニュアルが区別 |
| 病院に入院中 | 1 病院 等 | 施設内の病棟と病院入院は別。搬送後に病院で死亡した場合は病院記事 |
どちらの書類名(死亡診断書/死体検案書)で交付されるかは、かかりつけ医との関係・死因の判断により医師が決めます。厚生労働省は、両者の戸籍手続き上の効力に違いはないと説明しています。
出典:厚生労働省「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」・同「死亡診断書(死体検案書)について」
施設から連絡が来たら
多くの施設では、看護職・介護職が死亡を確認したのち、入居時に登録した緊急連絡先(ご家族)へ電話します。同時に、契約で定めた医師・往診医・オンコール医へ連絡し、死後診察と診断書交付の手配に入る運用が一般的です。ご家族が現場に駆けつけられなくても、施設側で医療連絡が進むことがありますが、死亡届そのものは原則として届出人(家族等)が市区町村へ提出します。
電話の時点で、次の4点をメモできると後戻りが減ります。(①)死亡が確認された日時 ②)医師の診察予定 ③)施設内で安置できる上限時間 ④)搬出に必要な書類・立会いの要否。施設によっては、診断書を施設が一時預かり、家族が後日窓口で受け取る運用もあります。
出典:法務省「死亡届」・厚生労働省「医師法第20条ただし書の適切な運用について」
手続きの流れ
葬儀の準備と戸籍手続きは並行しますが、依存関係としては診断書等の交付 → 死亡届 → 埋火葬許可など自治体手続きの順が基本です。以下は施設内で死亡が確認された典型例です。
- 施設がご家族・医師へ連絡し、死後診察の日程を調整
- 医師が死亡診断書又は死体検案書を交付(受け取りの詳細)
- 安置先を決める(施設内・葬儀場・ご自宅等)と搬送手配
- 死亡の事実を知った日から7日以内に死亡届(期限と書類)
- 受理後、自治体により埋火葬許可証等の案内(例:柏市)
法務省は、提出期限を「死亡の事実を知った日」から起算すると案内しています。施設からの電話を受けた日が「知った日」となることが多いため、診断書の準備が翌平日になる場合でも、期限だけは葬儀日程と切り離して管理してください。書類が遅れそうなときは、届出先へ電話相談する旨が法務省案内にあります。
出典:法務省「死亡届」・柏市「死亡届」
並行手続きの期限一覧
施設で亡くなったあとも、葬祭費・年金・火葬の許可は別窓口・別期限です。公的出典付きの一覧です。詳細は葬祭費・葬儀・火葬へ。
| 手続き | 期限・目安 | 主な届出先 | メモ |
|---|---|---|---|
| 戸籍の死亡届 | 死亡の事実を知った日から7日以内(国外死亡を知った場合は3か月以内) | 死亡地・本籍地・届出人所在地の市区町村 | 葬儀日程とは独立。添付は死亡診断書又は死体検案書1通(法務省) |
| 埋火葬(火葬)の許可 | 死亡届の提出とあわせて申請する運用が多い(自治体による) | 死亡届を提出した市区町村 | 許可証がないと火葬場で火葬できない(自治体例:柏市) |
| 火葬を行える時期 | 原則として死亡後24時間を経過してから(例外あり) | 火葬場・自治体の案内 | 墓地埋葬等に関する法律第3条(e-Gov)。検視等がある場合は異なる |
| 年金受給権者死亡届 | 必要な場合:厚生年金は10日以内・国民年金は14日以内の案内(日本年金機構) | 日本年金機構(年金事務所等) | マイナンバーが機構に収録され7日以内に戸籍死亡届が出された場合など、届出省略の案内あり(日本年金機構FAQ) |
| 国民健康保険などの資格喪失 | 自治体ごと(多くは死亡後速やかに届出・保険証返還) | 被保険者の住所地市区町村 | 死亡届の受理と同一窓口で案内される場合あり |
| 葬祭費(国民健康保険) | 条例・FAQによる(例として2年以内を掲げる自治体あり) | 葬儀を行った方の住所地を管轄する市区町村など | 死亡届とは別申請。額は全国一律ではない |
| 介護保険の資格喪失 | 自治体案内による(死亡届とは別窓口のことが多い) | 市区町村の介護保険担当 | 被保険者証の返却等。施設退去精算と並行 |
火葬については、墓地埋葬等に関する法律が原則として死亡後24時間経過後の火葬を定め、検視を要する場合などは例外があります(e-Gov)。埋葬・改葬の手続きは葬儀・火葬の総合で整理しています。
出典:法務省「死亡届」・墓地埋葬等に関する法律第3条(e-Gov)・日本年金機構
施設と家族の分担
介護保険の指定施設と民間の有料施設では、死亡後に職員が代行できる業務が契約・運用で異なります。下表は家族が押さえるべき論点の整理です。
| 項目 | 施設側で進むことが多いこと | 家族側で押さえやすいこと |
|---|---|---|
| 医師連絡・死後診察 | 契約医・オンコール医への連絡、立会い調整 | かかりつけ医が別にいる場合の情報共有、診療情報の提供 |
| 診断書等 | 受け取り方法の案内、一時預かり(施設による) | 死亡届用の通数、年金・火葬用の写し依頼(枚数の記事) |
| 安置・搬送 | 施設内安置可能時間、搬出口・エレベーター案内 | 葬儀社・搬送の契約、見積確認(公定価格のない項目あり) |
| 死亡届 | 所在地市区町村の窓口案内(任意) | 届出人の選定、持ち物、提出先の決定(戸籍法・法務省) |
| 入居契約 | 解約・精算・遺品引き取り日の案内 | 契約書条項との照合、日割り・手数料の確認 |
死因に異状があると医師が判断した場合、医師法第21条に基づき所轄警察署へ届出が行われることがあります。警察・検察の捜査が入ると、搬送・引き取りのタイミングが変わるため、施設・医療機関・警察の指示が先です。自宅死亡時と同様の整理はご自宅の記事(警察・救急)を参照してください。
出典:医師法第21条(e-Gov)・厚生労働省「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」
施設長と家屋管理人(届出人)
戸籍法第87条第1項第3号では、届出義務者に家主・地主・家屋管理人・土地管理人等が含まれます。法務省の死亡届案内でも同趣旨が示されています。死亡地が老人ホーム・介護施設である場合、自治体のFAQでは施設長が家屋管理人に当たり届け出る運用の説明例があります(例:座間市は老人ホーム・介護施設を含む施設で、施設長を家屋管理人の例として記載)。
| 届出人の区分 | 施設死亡で押さえる点 |
|---|---|
| 同居の親族等(義務者) | 遠方にいても届出可能な場合あり。署名は届出人本人(法務省) |
| 家屋管理人 | 届出先の市区町村が施設長を認めるか事前確認(自治体による) |
| 届出資格者(非同居親族・後見人等) | 義務者がいない・届出できないとき(戸籍法第87条第2項) |
| 公設所の長 | 公営施設で他に届出人がいない場合の準用(戸籍法第93条) |
家族が届出人になるか、施設側が家屋管理人として届けるかは家庭の状況と自治体の受付実務で決まります。持ち物・代理人(葬儀社等)の可否は届出先の案内が基準です(座間市・柏市の死亡届ページ参照)。届出人の順序の表は死亡届の「誰が届けるか」にあります。
出典:法務省「死亡届」・戸籍法第87条・93条(e-Gov)・座間市「死亡届」
死亡届・死亡地
法務省は、死亡届を死亡地・本籍地・届出人の所在地の市区町村へ提出できる旨を案内しています。施設で亡くなった場合、診断書に記載された施設の住所が死亡地の根拠になることが多く、施設がある市区町村が「死亡地」の候補になります。遠方に住むご家族が、自分の住所の市区町村(届出人の所在地)で受け付けられるかは自治体ごとに運用差があるため、出発前の電話確認が推奨されます(提出先の表)。
| 提出期限 | 死亡の事実を知った日から7日以内(法務省)。7日目が閉庁日のときは翌開庁日まで、とする例もある(例:柏市) |
|---|---|
| 手数料 | 不要(法務省) |
| 添付 | 死亡診断書又は死体検案書 1通 |
| 届出人 | 親族・同居者・家主等、後見人等(戸籍法第87条・法務省) |
柏市の案内では、死亡届が受理されると埋火葬許可証の発行に進む旨が示されています。火葬場予約・葬儀の日程とは別系統の手続きである点は、総合ガイドの並行手続き表と同じです(葬儀・火葬の総合)。
全国共通様式では、死亡診断書(死体検案書)が死亡届用紙と一体になっている場合があります(柏市の注記)。施設経由で受け取った際、黒インクでの記入・汚損注意・提出後の返却不可など、自治体が注意する事項を事前に読んでおくと窓口での不備が減ります。写しが必要な場合は、提出前に医療機関・施設へ依頼してください。
出典:法務省「死亡届」・戸籍法第86条・87条(e-Gov)・柏市「死亡届」
家族の確認リスト
施設・市区町村へ問い合わせる際のチェック項目です。回答は施設・届出先の当日案内が基準です。
| 誰に | 聞くこと |
|---|---|
| 施設 | 診断書の受け取り日時・窓口/預かりの有無/安置可能な最長時間/搬出手続き・立会い |
| 施設 | かかりつけ医と施設契約医のどちらが交付するか/写し・追加発行の依頼先 |
| 市区町村(戸籍) | 提出先として受理できるか(死亡地・本籍・届出人住所)/受付時間/一体型用紙の要否 |
| 市区町村 | 診断書の写しで足りるか/印鑑・委任状の要否/受理後の埋火葬許可の流れ |
| 市区町村 | 国民健康保険の資格喪失・葬祭費の案内有無 |
出典:法務省「死亡届」・柏市「死亡届」
入居前に決めておくこと
入居前に決めておくと、死亡直後の判断が速くなる項目です。契約書・説明資料と矛盾がないか、入居時の口頭説明とも照合してください。
| 決めておくこと | 理由 |
|---|---|
| 看取り・施設内死亡への対応 | 施設ごとに体制が異なり、搬送が必要になる場合がある |
| 緊急連絡先の順番(夜間つながる番号) | 死亡確認後、医師手配と家族連絡がこの順で進むことが多い |
| かかりつけ医と施設契約医の分担 | 診断書交付窓口と死後診察の予想が変わる |
| 安置可能時間・搬出のルール | 契約書の日数上限と施設内安置の可否 |
| 葬儀社を施設指定にするか | 紹介は任意。見積は家族が確認する前提 |
| 退去・遺品・日割り精算 | 死亡後の解約条項と預り金の扱い |
出典:各自治体・施設契約の公表(予防的確認用)
市区町村の公表例
全国一律の金額・様式ではなく、届出先市区町村の公式ページが実務の基準です。以下は編集部が参照した公表例です(お住まい・施設所在地の自治体を優先してください)。
| 自治体(例) | 内容 |
|---|---|
| 柏市 | 死亡届・一体型用紙・埋火葬許可 |
| 座間市 | 死亡届(家屋管理人・施設長の例釈・持ち物) |
| 練馬区(東京都) | 葬祭費の要件・額の公表例 |
表中の市区町村名ごとの一次情報は、記事末尾「参照・出典」にURL付きで掲載しています。お住まいの自治体は市区町村名+手続き名で公式サイトを検索してください。
都道府県から辿る入口は都道府県ガイド(市区町村URLは順次拡充)。
出典:柏市・座間市・練馬区の公式ページ(参照日時点)
搬出・契約終了
遺体を施設から搬出したあと、入居契約の解約、共益費・日割り料金、遺品の引き取り日時を施設窓口で確認します。介護保険の適用終了や医療費の精算も別途発生する場合があり、公定価格のない項目は見積書と契約条項を照合してください。
施設内で安置日数に上限がある・すぐに搬送が必要な場合は、安置先の比較手順を霊安室がいっぱいのとき(搬送先選びの枠組み)と併用できます。都道府県別の窓口は都道府県ガイドから辿ります(自治体URLは順次拡充)。
出典:各自治体・施設の公表(契約は個別確認)
よくある質問
施設に住民票を置いていますが、死亡届の死亡地は「自宅」ではないのですか?
厚生労働省の死亡診断書記入マニュアルは、施設に入所・入院していて当該施設に住民登録している場合でも、死亡したところを「自宅(6)」ではなく、施設の種類に応じた区分(例:老人ホーム「5」、老健「3」)で記載するよう示しています。戸籍の「死亡地」は診断書の記載と市区町村の受付を突き合わせて確認してください。
私の住んでいる市の役所に死亡届を出せますか?
法務省は、死亡地・本籍地・届出人の所在地の市区町村への提出を案内しています。届出人の住所だけで必ず受理されるわけではなく、自治体の解釈・運用に依存するため、出発前に電話または公式FAQで確認してください(提出先の節)。
特養と有料老人ホームで手続きは違いますか?
戸籍上の死亡届・添付書類の大枠は同じです。異なるのは主に、診断書の「死亡したところの種別」がどちらもマニュアル上「老人ホーム(5)」に含まれるか、老健・介護医療院かどうか(区分「3」)、契約上の安置・搬送ルールか、です。施設カテゴリは上の表で整理しています。
診断書が平日まで届かないのですが、7日の期限は大丈夫ですか?
期限は「死亡の事実を知った日」から起算されます。診断書の準備を待たず、期限が近い場合は届出先市区町村に相談する旨が法務省案内にあります。厚生労働省は、在宅看取りでの医師法24時間の解釈誤りが現場に影響しないよう通知しており、死後診察のタイミングは医師の判断が先です(総合ガイドのよくある誤解)。
死亡届を出したら火葬の予約が自動でできますか?
自動ではありません。柏市の例では、死亡届の提出後に埋火葬許可証の発行に進む旨が示されています。火葬場の予約・費用は自治体と事業者の案内に従い、葬儀・火葬の総合と並行手続きとして整理してください。
施設長が死亡届を代わりに出してくれますか?
施設の運用と届出先の解釈によります。戸籍法上、家屋管理人は届出義務者に含まれ、自治体によっては介護施設の施設長を家屋管理人の例として説明しています(座間市)。家族が届出人になる場合も多いため、死亡直後に届出先市区町村へ「誰が署名するか」を確認してください。
火葬は亡くなってすぐでもできますか?
墓地埋葬等に関する法律は、原則として死亡後24時間を経過してから火葬する旨を定めています(検視等がある場合は異なります)。許可証の取得と火葬場予約は別手続きです(並行手続きの一覧)。
診断書の写しは何枚用意すればよいですか?
死亡届用は1通が原則ですが、年金・保険・火葬場などが写しを求めることがあります。提出前に返却されないため、自治体提出前に医師・施設へ追加発行または写し可否を確認してください(柏市・座間市の注意事項、枚数の節)。
出典:法務省「死亡届」・厚生労働省記入マニュアル・柏市「死亡届」
次に読む
参照・出典
| 資料名 | 発行元 | 参照日 |
|---|---|---|
| 死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル(令和版) | 厚生労働省 | 2026-11-07 |
| 死亡診断書(死体検案書)について | 厚生労働省 | 2026-11-07 |
| 死亡届 | 法務省 | 2026-11-07 |
| 戸籍法(e-Gov法令検索) | e-Gov | 2026-11-07 |
| 医師法(e-Gov法令検索) | e-Gov | 2026-11-07 |
| 医師法第20条ただし書の適切な運用について(通知) | 厚生労働省 | 2026-11-07 |
| 死亡届(お手続きについて) | 柏市 | 2026-11-07 |
| 死亡届 | 座間市 | 2026-11-07 |
| 死亡届 | 法務省 | 2026-11-07 |
| 墓地埋葬等に関する法律(e-Gov法令検索) | e-Gov | 2026-11-07 |
| 年金受給者が亡くなりました。何か手続きは必要ですか。 | 日本年金機構 | 2026-11-07 |
| 年金を受けている方が亡くなったとき | 日本年金機構 | 2026-11-07 |